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【裁決事例】財産評価基本通達に定める方法により評価して相続税の申告をした後、実際の売却価格が当該不動産等の時価であるとして更正の請求をしたところ、認められないとされた事例(令和5年2月9日裁決)

基礎事実

請求人は、不動産について通達により評価し、相続税申告書を提出した後、各不動産等の価額については、各売却価格がその評価額として適正であるため、本件申告書で算定した別表不動産の価額には誤りがあったとして、更正の請求をした。



納税者の主張

■売却価格は、純然たる第三者である買主が提示した金額であり、路線価を基として計算されている上、実際に合意に至った金額である。


■売却価格の合計額は、路線価や近隣の売買実例と比較しても、合理的な価額である。


ことから相続税法第22条に規定する時価であると主張。


税務署の主張

■売却時における当事者間の諸事情を反映して決定される現実の売却価格は、何らの事情補正等を行うことなく、客観的な交換価値を表すものとみることはできない。


■請求人が主張する近隣の売買実例についても、売却時における当事者間の諸事情が明らかではないことから、当該売買実例をもって、本件各売却価格が時価であると判断することは相当ではない。


以上のことか評価通達の定める評価方法によらないことが正当と是認されるような特別の事情は認められないから、本件各通達評価額が本件各不動産等の時価である。


審判所の判断

■法令解釈

相続税法第22条にいう「時価」について


相続等により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を規定している。

ここにいう時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものである。


そのため

平等原則から照らせば、

特定の納税者あるいは特定の財産についてのみ、

評価通達の定める評価方法以外の評価方法によってその価額を評価することは、

原則として許されないものとしている。


したがって、

評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として

一般的な合理性を有するものであり、

かつ、

当該財産の相続税の課税価格がその評価方法に従って算定された場合には、

その時価を超える評価額となり、適正な時価を求めることができない結果となるなど、

特別の事情がない限り

評価通達の定める方法によって評価するのが相当である。



■検討


⭕️実際の売却価格であるとしても、当該売買の当事者間における合意金額にすぎないから、直ちにそれが時価と認められるものではない。

⭕️買主である不動産業者は、転売により自らに損失が生じない価格で購入するため、利益が見込まれる金額を購入希望金額とし、結果、本件各業者売却価格で不動産を購入したものであること

⭕️請求人は、路線価に基づいて売却価額が決定されたとしているが、その金額に開きがある。


以上のことから、本件各売却価格の合計額が本件各不動産等の客観的な交換価値(時価)であると認めることは困難であり、

請求人の主張する事情は、

評価通達に定める評価方法によるべきではない特別の事情には当たらないとした。


《参照条文等》

相続税法第22条《評価の原則》



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