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【裁決事例】共同住宅の貸室の一部が2ヶ月空室であったことは、一時的に賃貸されていなかったものとは認められないため、貸付事業用宅地等に該当せず、小規模宅地等の特例の適用はないとした事例(令和5年4月12日裁決)

更新日:7月24日

基礎事実

本件は、共同住宅の8部屋のうち、相続開始の時に5部屋が空室であり、

うち3室は、その状態が長期にわたっており、

残る2室についても積極的に新たな入居者を募集していたとはいえないことなどから、

賃貸されていたのと同視し得る状況にはなく、

一時的に賃貸されていなかったものとは認められないと判断し、


原処分庁が、当該宅地の一部は当該特例を適用することができないとして相続税の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の一部の取消しを求めた事案である。



納税者の主張

■法令には、「賃貸割合」を乗じて計算するとは規定されていない。

■空室部分については、本件被相続人が複数のインターネットサイトで入居者の募集をしている。


ことからその全てが貸付事業の用に供されていた宅地であると主張。



税務署の主張

■本件各空室部分は、賃貸されていない期間が本件相続の開始の前後にわたり長期に及んでいると認められること。(空室5部屋のうち3部屋が4年半以上、2部屋が2、5ヶ月空室)


■本件各空室部分が空室となった直後から新規の入居者を募集しているなどの事情はなかったと推認できること。


■インターネットサイトの募集広告については、いつ、誰が新規の入居者の募集を依頼したなどの具体的な内容が明らかでないこと


以上のことか相続の開始の直前において貸付事業の用に供されていたとは認められない。


審判所の判断

■法令解釈

小規模宅地等の特例は、


①被相続人等の貸付事業の用に供されていて、

②被相続人の親族が、申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該貸付事業の用に供していること


以上の要件を満たす「貸付事業用宅地等」に該当するときに適用されるものである。


しかしながら、措置法通達69の4-24の2に

空室であっても「一時的に賃貸されていなかったと認められる部分」がある場合においては、貸付事業用と認められる旨が定めている。



「一時的に賃貸されていなかったと認められる」場合とは、

⭕️引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在し、

⭕️現に賃貸借契約終了から近接した時期に新たな賃貸借契約が締結されたなど、


相続開始の時の前後の賃貸状況等に照らし、

実質的にみて相続開始の時に賃貸されていたのと同視し得るもの


■検討

①4年半以上空室の3部屋は長期間のため、一時的に賃貸されていなかったとは認められない。


②2ケ月又は5ヶ月空室の2部屋については

共同住宅の入居者を募集する旨の広告が掲載されていたものの、


⭕️本件不動産業者が本件共同住宅に関して入居者を仲介した実績がないこと、

⭕️本件不動産業者が本件被相続人と連絡が取れなかったことにより

⭕️平成27年以降の本件共同住宅の空室の状況を把握していなかったこと、

⭕️本件不動産業者ではオーナーから広告の掲載を取りやめたい旨の申出がない限りその掲載を継続する扱いをしていたことからすれば、


平成27年以降においては、本件被相続人が上記一般媒介契約及び上記広告を放置していたにすぎず、積極的に本件共同住宅の新たな入居者を募集していたとはいえない。


以上のことから空室は一時的な空室とは認められず、小規模宅地の特例は適用することはできないとした。


《参照条文等》

租税特別措置法第69条の4第1項、第3項第4号イ

租税特別措置法施行令第40条の2第4項

租税特別措置法通達69の4-24の2


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